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卒業

卒業

書物のほんとうの喜びは、なんどもそれを読み返すことにある。
-D・H・ロレンス

ということで、この備忘録も書き始めて早2年、改めて読み返してみると在りし日の思い出がありありと蘇ってくる。自分の記録のためにつけ始めた日記であり、乱雑な内容かつ不定期更新だったが、もし読んでくれて少しでも楽しんでくれた方がいらっしゃったのであれば幸いである。

5月15日に無事USC Marshall School of Businessを卒業、一旦ここでブログも卒業としたい。最後に振り返りとして、MBAに来て大きな学びとなったことをまとめておきたい。

1.人脈

アメリカには「ハグ」という習慣がある。挨拶代わりに軽く抱き合う、まぁ簡単に言えば握手の延長線上にあるものだ。ある程度仲良くなるまでこの「ハグ」は続くのだが、不思議なもので一定以上仲良くなるとパーティで会ってもハグをしなくなるのである。近い間柄でしょっちゅう会っているのにハグをするのは気恥ずかしいのだ。そんな「ハグをしない友達」がたくさん増えた。皆卒業後世界中に散っていくが、Whatsappの仲の良い友達グループでテキストが飛び交わない日は、卒業したこれからも、一日たりともないであろう。

仕事関連でもネットワークは本当に大きく広がった。ブリザードの社長宅にも遊びに行けたし、何社かこちらのゲーム会社の日本進出をお手伝いすることもできた。どこのゲームのイベントに行っても、誰か日本人以外の知り合いに会えるようになった。確実に今後人脈として活きてくるはずだ。

2.英語

本当に英語を完璧に話し、使いこなそうとするなら、2年の留学は全く足りない。恐らく、10年いても完璧にはならないであろう。しかし、100%コミュニケーションに困らなくなった。喜怒哀楽を友人達を共有できるようになった。アメリカ人との仕事でも大きなディスアドバンテージはなくなり、逆に既成の枠にとらわれない不思議な英語を駆使してアメリカ人を笑わせられること、日本語を100%使えることがアドバンテージとして活かせるようになった。

3.プレゼンテーション

英語でのプレゼンテーションは準備の時間さえあればばっちり決められるようになった。そしてセンスがいい人のパワーポイントのテンプレートをストックすることでやたらかっこいいスライドを作成できるようになった。地味に仕事で一番使うことになるであろう。

4.知識

経営全般に関する知識を得ることができた。最も重要なのは、業務上で課題がある時に、アプローチの仕方がロジカルに思い描けるようになったことである。必ずしも毎回ロジカルなアプローチが正しいとは限らない。但しその目的が多くのステイクホルダー(社員など)と腹落ちするアプローチを共有し、同じ方向を向いてもらうことであるなら、一つの手段としてこれは非常に有効であると言える。

これからまた新しい生活が始まる。この2年間が人生最高の二年間!と言いたいところだが、これからの人生をもっと素晴らしい時間にしていけるようにしたい。留学記はこれでおしまい。ただ、たまーに書いたりしてもうちょっと続きます。多分。Fight on!!

全てのプログラムが終了!!

全てのプログラムが終了!!

昨日の期末試験をもって、MBA全てのプログラムが終了。後は15日におこなわれる卒業式を残すのみである。入学した時は永遠に続くことのように感じられたが、終わってみれば本当にあっという間であった。楽しいことばかりでなく、つらいこと、寝る間もないほど忙しいことも度々あったが、今思えば全ていい思い出である。この場を借りて、今回の留学を実現させてくれた全ての人、留学を素晴らしいものにしてくれたクラスメート、そして知識を与えてくれた教授たちにお礼を言いたい。何をもって成長というのかは人それぞれだと思うが、間違いなくかけがえのない経験であり、人間として大きく成長できたと信じている。

先日Huluで、ゲーム業界の新規ビジネスについて最後のプレゼンテーションをおこなった。20分の持ち時間が切れ、最後の「Risk」についてのスライドについて、”There are risks but whatever!”(リスクはあるけどどうでもいいよね!)と言って終わらせたところ、クラスが笑いに包まれた。その後、友人から「”There are risks but whatever”ってMBAで学んだことの中で一番重要なことかもしれないね」と言われた。半分冗談だが、確かにその通りだなぁと思う。リスクを取らずに一日、また一日と漫然と過ごしていては、ついにはできるはずだったこともできずにきっと一生が終わってしまう。

ブログに書こうか迷ったが、実は先日クラスメートの一人が亡くなった。28歳であった。卒業旅行の直後であり、卒業の直前というタイミング、残念でならない。最後の彼女との思い出は、サンダンス映画祭。20人くらいの友人達と同じキャビンに泊まったのだが、翌朝5時頃映画のチケットを買いに行く際に、彼女も一緒に行く予定になっていたものの、彼女の部屋から寝息が聞こえたためそっとしておいたのを覚えている。映画好きの彼女は非常にスマートで、パラマウントでインターンシップをし、将来映画業界で働くことを夢見ていた。同じGraduate Certificate in Entertainment Businessの取得を目指していた仲間だった。そこまで近しい間柄ではなかったものの、聞いた時のショックは大きく、卒業旅行での元気な写真を見ると今でも信じられない。

勿論長生きしたいが、いつ人生を終えても悔いのないよう、精いっぱい生きていこうと心に誓うのであった。

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こちらはCiscoのエンジニアになる友人ブランドンからのプレゼント。ベースギターに使うエフェクターである。彼はエフェクターを自ら製作し販売しており、スタンフォード大学でおこなったコンサートで組んだバンドのメンバーの一人でもある。今回は私に合わせて特注で作ってもらった。ミニマリズムを追求し、マルチエフェクターでありながらスイッチは一つしかなく、エフェクトの効果を変更するためには蓋を開けなければいけないこだわりようである。将来彼が有名になってプレミアムが付くといいな。

Dis Orientationと妻の訪米

Dis Orientationと妻の訪米

先週の3連続プレゼンテーションも無事終わり、すっかりブログの更新を忘れたまま、先週末はDis Orientationという卒業旅行があり、ラスベガスへ。ロサンゼルスの人々にとってラスベガスは車で5時間程度の距離ということもあり、非常に身近な保養地である。全然規模感は違うものの、気軽さとしては東京→伊豆くらいの気分と言えば分かりやすいだろうか。実はホテル代も競争が激しいため案外安かったりする。みんなで楽しく騒いで写真を撮って、なかなか最後にいい思い出になった。

月曜日には妻が私が留学してから2度目の訪米。バレエをしている妻にどうしてもシルクドゥソレイユを見せてあげたかったこともあり、火曜の朝から思いつきでなんと再度ラスベガスへ1泊2日の強行軍。KAを鑑賞してただいま家に戻ったところである。楽しんでくれたようでよかった。芸の肥やしになってくれれば幸いである。

本日は夜から友人とコリアンバーベキューの予定。USCから一年前にフランスのMBA、INSEADに転校した友人が卒業旅行?で現在ロサンゼルスに滞在中なのである。本当に久しぶりの再会なので楽しみ。

プレゼンテーションその1

プレゼンテーションその1

本日は各クラス最終プレゼンの記念すべき1回目。明日、明後日とまた別のクラスのプレゼンテーションがある。今回はシネマクラスにおけるプレゼンテーションのため、MBA以外の大学院生も多く含まれているのだが、そこで気づいたのは、アメリカ人が全員プレゼンテーション上手ではないということ。MBA以外の学生は皆かなり緊張しているように見える。声や手が震えている人も。もしかしたらこの2年間で大分プレゼンテーション自体に慣れたこともあるかもしれないが、恐らくMBA以外の学生は多くが学卒→大学院と直接進むため、会社でプレゼンテーションの経験がないことも影響しているかもしれない。

肝心の最終プレゼンテーションの内容は、映画スタジオが今後進むべき新しいビジネスの提案。私のチームはTheTakeというウェブサイトを取り上げてリテールビジネスへの投資を進言。

https://thetake.com/

このサイト、なかなか良くできている。映画のトレーラーを検索して好きに観ることができるのだが、それだけでなく俳優が着ている服などをクリックするとそのままアパレルのウェブサイトに飛んで買うことができるのだ。「プロダクトプレースメント」という広告宣伝手法に近い。現在はマネタイズ自体していない=1円も生み出していないようだが、将来的に様々な展開が考えられる。

このウェブサイトにどんな技術が詰め込まれているのかと思うが、実は人力で俳優が着ている服に似た服を見つけ出してタグ付けしているらしい。これだけデジタル化が進んだと言っても、案外なかなか機械に取って代わられづらい部分も残っていたりするものだ。

先週の振り返り

先週の振り返り

学校生活も残すところあとわずか。来週に3つプレゼンテーション、5月に1つプレゼンテーションと期末試験があって終了である。もう講義はない。2年間本当に早かったなーと思いつつ軽い喪失感と卒業後の期待感とが入り混じった複雑な気持ちである。取り急ぎ、忘れないうちに先週の振り返りをしておきたい。

4/20-22
最後の講義やグループミーティングなど。この時期になると学生も皆慣れたものでグループワークは役割分担を明確にし、最低限の打ち合わせだけで済んでしまう。とはいえ、学校関連以外にも引っ越しなんやかんやで色々と忙しかったりする。月曜には会社に提出するために健康診断を受けた。人生初の180センチメートルに到達!!この歳になって背が伸びるなんてそんなバカなと思いつつ嬉しかったりする。

4/23(木)
スタンフォードウィークエンドでのバンドメンバーとコリアンバーベキュー。次に集まるのはジャパンツアーだねーなどと話し盛り上がった。

4/24(金)
一年生の日本人4人に送別会を開いていただく。マリナデルレイというヨットハーバーでこの日もバーベキュー。いやぁ、全然お世話しなくてごめんなさい。記念の品までいただいてなんとお礼してよいのやら。また日本で飲もうね。

4/25(土)
友人の誕生日会で3日連続のバーベキュー。さすがに胸焼けがする。夕方には家に帰ってこの日は養生。

4/26(日)
今日はブリザードエンターテインメントのイベントがUSC前の講堂でおこなわれるため参加予定。その前にアンドリューが遊びに来て大黒屋でラーメンを食す予定。

来週はプレゼンテーションラッシュが終われば週末はラスベガスで卒業旅行が待っている。150人くらい参加するようなので楽しみだ。ではでは。

ゴールデン・ブリーフケース

ゴールデン・ブリーフケース

昨年の同じ時期にも同じ内容の日記を書いたような気がするが、先週末はスタンフォード大学でC4C(チャレンジ・フォー・チャリティ)という大規模な学生ボランティア団体の企画するイベントがおこなわれた。一年間トータルでの学生一人当たりのボランティア時間、チャリティへの寄付金額、スタンフォードでのスポーツ順位によって勝敗が決まるのだが、USCは昨年に引き続き6年連続で優勝。再び優勝の証であるゴールデン・ブリーフケースを持って帰ることができた。ちなみに参加校はUSC、UCLA、UCI、UCF、UCバークレー、スタンフォード、ワシントン大学の7校…だった気がする。

そんなイベントの中で一番盛り上がるのがバトルオブザバンドという各校の代表バンドによるライブパフォーマンスなのだが、ベースギターとして参加。学生生活の最後を飾るに相応しいいい思い出となった。
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こちらはステージからの景色。1,000人以上の前で演奏するなんてもちろん初めての経験である。
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バンドメンバーとゴールデンブリーフケースとの記念撮影。

卒業まで25日。さて、レポートでも仕上げますか。

スマートフォンゲームに必要な4つの原則

スマートフォンゲームに必要な4つの原則

昨日はHuluでゲーム業界のアントレプレナーであるAndy Kleinman氏の講義。これまで多くのスタートアップを立ち上げ、4つエグジットに成功し、1つをIPOさせた実力者。現在はインディーズ映画のプロデューサーも務めている。

講義自体は凡庸で、ゲーム業界で働いていた人なら正直もう知っていることばかりであった。どこからか引っ張ったのだと思うが、いくつか面白い数字があったので挙げておこうと思う。

市場規模

Film 90B
Games 100B

多分これはアメリカ市場の金額だろう。

XBOX 80M
PS3 80M
Wii 100M

かつて市場を独占していた3つのゲーム機の普及台数。

2 billion smartphones

いかにスマートフォンの台数が桁違いで可能性を秘めているかが分かる。

150 times a day

一日に人が携帯をチェックする回数。150回‼こうやって数字で見るともはや人類はスマートフォンに支配されているような気さえしてくる。

1.5M apps
80% games

スマートフォン向けのアプリ150万のうち、80%がゲームであるということ。マネタイズが最もやりやすい分野なので妥当なところだろう。

small teams
focus on live operations
experts in user acquisition

スマートフォンゲームは従来のゲームと比較し「少人数のチーム」「ライブオペレーション(サービスイン後の運営)」「インストール数獲得のためのエキスパート」がキーになっているとのこと。

#1 Retention
#2 Engagement
#3 Viral Growth
#4 Monetization

ゲームが流行るために必要な4つの原則。1はいわゆる翌日もお客様が来てくれるか、という継続率である。3は口コミでどれだけ人を集客できる力を持っているか。4は最終的に集めたお客様がお金を払ってくれるかということ。#2 Engagementが良く分からなかったので質問してみると、どの場所で人が離脱しているか確認してゲームを修正していったりすることだ、とのこと。

この回答にはちょっぴりがっかり。これは当然のことで、もうPCオンラインゲーム業界は10年以上前からやっていることである。結局そのころからゲームのおける顧客データ分析関連は全く発展していないということになる。そこに頼り切っているのであれば、他との差別化には全くならないし、今後新しいものなんて生み出せないだろう。

$24B
By 2016

2016年までにスマートフォンゲーム市場は世界で約3兆円弱もの市場になるそうだ。2年で倍以上に膨らんでいるとのこと。

講義内容を聞いて、やはり日本のスマートフォンゲーム業界はいびつであれ多くの部分でアメリカより進んでいる部分があると感じた。ゲームを知らない人に向けた講義であることを差し引いても、言っていることがやや古いのである。もっと国境を越えてお互いに混じり合うことさえできれば、きっと日本企業のチャンスも飛躍的に高まるだろう。

クラウドゲーミング

クラウドゲーミング

シネマスクールの授業の中で、毎週Huluでおこなわれる授業があるのだが、その最後のプレゼンテーションとして「クラウドゲーミング」に関する発表をおこなうことになった。

クラウドゲーミングは、通常クライアント側(ゲーム機やスマートフォンやPC)でおこなう処理の計算をサーバー側でおこない、クライアント側に映像だけを送る技術である。理論的にはどんな高スペックのゲームでもネット環境さえあれば端末を問わず遊べるようになる夢の技術だ。現状コストやレイテンシ(映像遅延)、インターフェースなどの問題点が山積みではあるものの、そう遠くない将来ゲームの主流となるのは間違いない。

あと10年もすれば、映像のクオリティで差別化をすることがほぼ不可能になり、その後もコンピューターの処理速度が向上していくことで、サーバー1台で数百、数千もの高クオリティゲームを処理し、配信することができるようになるはずだ。その頃にはインターネットの速度も向上し、おおよそシビアな対戦ゲーム以外は全くタイムラグを感じることなくスムーズにゲームがプレイできるようになる。インストールする必要もない。

しかし、問題はビジネスとして始めるタイミングである。今始めても、少なくとも数年間は赤字を垂れ流すことになるだろう。かつてYouTubeがスタートした時、まともなビジネスにならず大赤字であった。それを乗り越えるだけの覚悟があるかどうか。

現状、主なプレイヤーはソニー、マイクロソフト、スクウェア・エニックスなどである。ソニーはすでにこの分野に数百億円規模の多額の投資をしているが、現状のビジネスとの兼ね合いもありどこまで積極的になれるかは疑問が残る。最終的にはぽっと出てきたベンチャーが市場をさらっていくのではないかという気がする。最終的にはコンテンツ次第であるが、最近のスマートフォンゲームとは違うベクトルの未来であり、なかなか興味深く見守っているのであった。

月桂冠は心身ともに卓越した者の頭上に

月桂冠は心身ともに卓越した者の頭上に

ずーっと前の話になるが、大隈重信の言葉で心に響いたものがあった。はっきりと一言一句思い出せるものではないのだが、確か以下のような内容だったと思う。

「体育に励むことによって、一時学問に遅れを取ることもあろう。しかしながら、最終的に月桂冠は心身ともに卓越した者の頭上に輝く」

日本にいた時、正直会社に入社してからというもの全く運動といった運動はせずに身体はたるみきっていた。アメリカに来てからマッチョな友人達の影響も受け、週に何回かアパートのジムでワークアウトするようになり、体重は6~7キロ程度落ちて(一年目一学期のストレスで痩せた分が大きいのだが)、なんだかとても身体の調子が良くなった気がする。昔は風邪ばかりひいていたが、全くといっていいほどひかなくなった。

日本に戻っても、この習慣は続けていけたらいいな、と思う。ただマンションにジムは付いていないので、ぶら下がり健康器でも買って懸垂でもしようかと検討中。今日はこれから友人達とサンディエゴに行く予定。コミコン以来なので楽しみだ。残り一か月、少しでも長く友人たちと時間を共に過ごして、卒業後もずーっと続く絆を深めていきたい。

Battle of the bands

Battle of the bands

先週金曜日はBattle of the bandsというUSCのチャリティークラブ主催のイベントに出演。3つのバンドが出演し、無事我々のバンドが優勝したため、来月スタンフォード大学でおこなわれるチャリティーイベントで何百人もの観客の前で演奏できることになった。やったね!ちなみに私のパートはベースギター。

思えば高校生の時は洋楽ばかり、ステレオにかじりつきながら何時間も飽きずに聴いていた。御茶ノ水の楽器屋やCDショップを何時間もウィンドウショッピングして周る典型的なロック好き少年だった。それが大学に入り、社会人と年を取るにしたがって不思議と音楽を聞かなくなり、姉に頼み込んでお金を借りてまで買った自慢の白いベースは次第に埃を被っていった。

もう楽器を弾かなくなって10数年も経ち、もう一生弾くことはないだろうと思っていた矢先、遠い異国の地でまた音楽を聴くようになり、ベースを弾いているのだから不思議な気分である。10数年間を経て、CDはデジタルに、楽譜は本からウェブサイトになった。昔みたいに2,000円の楽譜を30分迷った挙句、深呼吸してから買うこともなくなった。音楽業界が急速にシュリンクしているのは寂しい話ではあるが、本当に便利になったものである。

なにはともあれ、なんだか久々に青春時代に戻ったような気持ちで嬉しいのであった。