今週のシネマスクールの授業は、FOXのスタジオでメディアの将来についての集中講義。実際に学生が写真のOculusを体験して未来を実感した。簡単に説明すると眼鏡になっている部分から映像が見え、センサーによって頭を動かすことで映像が合わせて動く。デモでは森の中で自由に周囲を見渡すことができた。
没入感が高く、デモは非常によくできているのだが、正直この手のものは昔からある。任天堂のバーチャルボーイに始まり、最近ではソニーのHMDなど。5年くらい前には、頭を動かすと映像も動くタイプのゲームと連動したOculusにそっくりの商品を秋葉原で見たことがある。要は特別な技術なんて大して無いのである。それがプロトタイプから2年やそこらでFacebookに20億ドルで買収されたのだからすごい。
では何が特別だったのか。肝心要はマーケティングだったと私は思う。Kick Starterでクラウドファンディングというニュース性の高い資金調達に始まり、おばあちゃんや子供が付けて驚く様子の動画が共有されることで「一度試してみたい!」と思わせるワクワク感、そして350ドルという手が届きそうな割安感。これらが一気に広まった理由だろう。ちなみにOculusは元々USCの研究所のプロジェクトが元になっている。そして、タイミング。これらマーケティングのピースが揃うためには、10年前よりも今がベターだったのは間違いないだろう。
ゲーム界の巨人、横井軍平氏の言葉で「枯れた技術の水平思考」という言葉がある。要は、すでにある技術を繋げて新しいものが作れないか、ということ。任天堂のWiiなどはその典型例であろう。そして、ヘッドマウントディスプレイがブレイクスルーするきっかけとなったこのOculus。その横井軍平氏が手掛けたヘッドマウントディスプレイの先駆け、バーチャルボーイが今から20年も前に世に出ていたとは、何とも皮肉な話である。