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Feature Film Financing and the Studio System その4

Feature Film Financing and the Studio System その4

3の続き。映画予算高騰の理由は、何もスターにかかる費用の高騰によるものだけではない。

大きな理由の一つは、労働組合である。労働組合が力を持つ前はひどい環境だったそうで、現場の労働者は1日12~14時間労働の週6日勤務が平均的だったそうだ。日本のブラックな環境と比較するとそれほどひどくない気もしてしまうが、現在のアニメ製作現場の状況に似ている気がする。ゲームは会社によるが自分の知っている限りはまだましなほうだ。ハリウッドの労働組合というとどうしても馬鹿みたいな金額を吹っ掛ける悪いイメージが先行しているようで、教授はそのイメージ戦略の失敗に嘆いていた。基本的には各タレントは労働組合に所属していて、契約しない会社とは現状仕事ができず、特定の人物と直接契約、というのは結構難しいんだとか。

理由のもう一つは、レイオフの問題。日本の会社と違ってアメリカでは簡単にクビになる。予算を余らせてクビになった人はいないが、予算オーバーは必然的に誰かが責任を取ることになる。そのため、自然と予算拡大方向にパワーが働くのは当然のことと言えるかもしれない。インディペンデント系の映画だと予算に10%程度もしもの時のための資金を入れておくそうだが、スタジオ系の映画予算にそんな項目はない。誰もが皆多めに予算が申請されていることを知っているからだ、とのこと。暗黙の了解というわけである。変なシステムだ。そして、予算は最後に全部使い切るのも暗黙の了解。予算を余らせて評価されることはないのである。

日本のゲームはインディペンデント系の映画に近いかもしれない。私が予算を申請していたときは、比較的抑えた金額で申請を確実に通すことを優先し、忘れたことになんとか説得して予算を増やし、納期を伸ばす手を使っていた。まぁいいかと言われれば良くないのだが、納期、予算通りに完成したゲームを私は見たことがない。納期、予算通りのゲームは見たことがあるが未完成で100%失敗していた。個人的にゲームは100%完成させることがまず1stプライオリティーだと思う。

10年ほど前、FOXが高騰する予算に嫌気がさして労働組合を通さないように6か月くらい頑張ったらしいが、他の映画会社と談合するとアンチトラストに引っかかってしまうため足並みを揃えられず、かつ製作者のモチベーションが上がらずに断念したそうだ。ちなみにそんな談合が合法的にできるのは「日本」である。いいのか悪いのか、日本産コンテンツのサステイナブルな発展を考えれば、今後障害となってくるかもしれない。

続いて脚本についての話。

脚本は大体100~120ページ程度でアクション映画だと45ページ程度のこともあるらしく、特に制限はないらしい。ただ、あんまり長いと映画もダラダラ長くなったりして、映画館も上演回数が減って嫌がるらしい。

ハリウッドの脚本家の脚本というとなんだかすごい気もするが、ほとんどの脚本はBadらしい。その理由は以下の4つ。

1.映画に使えない、映画としてはダメな脚本

2.ライターがあんまりよくない

3.お金になりそうにない

4.参入障壁が低いため、ダメな脚本が量産される

そんな中キラリと光る脚本を見つけるのがなかなか難しかったりするわけだが、見つけた脚本が使えないこともある。エグゼクティブの誰かがNoと言ったり、他のスタジオとの入札に負けると残念、企画はお蔵入りとなるわけである。

また、いい脚本であってもスタジオが作れるものであるとは限らない。大変な予算がかかるわけで、ピッチで「この映画は売れます」ということを説得できないとそもそも企画が通らない。ちなみにスタートレックは「ワゴントレイン」という昔のテレビシリーズの宇宙版です、とピッチをして企画を通したそうだ。そのため、自然とスタジオ制作の映画はクリエイティビティが制限され、奇をてらった独創的な作品はインディペンデント系の映画会社にしか作れなかったりするそうだ。このあたりは日本のゲームでも「続編主義」と言われる、○○4とか、売れたタイトルの続編でないとなかなか予算が取れない状況に似ている。

Feature Film Financing and the Studio System その3

Feature Film Financing and the Studio System その3

「自分は意思が弱く、何かことをなすような人間ではない。 しかしそこで自分を駄目だと思ってあえて何もしなければ、すなわちできることもできなくなってしまう。 一時の平安に身を任せることを日また一日と重ねれば、ついには畳の上で老死するだけである。」 ―久坂玄瑞

個人的に好きな言葉なのだが、先週末は何をしたということもなく、なんだかだらだらと過ごしてしまった気がする。ここ最近、将来について色々と考えて悩んだりすることが多い。そして気づいたら時間が経って一日が終わってしまっていたりする。目標は明確なのでそれに対して一つ一つマイルストーンを置いていくだけなのだが、何が正しいのか正しくないのか、考えていると止まらなくなってしまう。もっと行動をしないと、時間ばかり過ぎて焦りが募る。自分への戒めを込めて。

前置きはこのくらいにして今回も授業のまとめをしたい。というかしないと忘れていってしまう。今日は別のクラスでFOXのスタジオに行って授業がある。どんな授業になるのか楽しみだ。

映画の資金調達の際には、まず必要となる予算表がある。予算表は最初の1ページが各項目にそれぞれいくらかかるのか簡単な見出しのページとなっている。予算は大きく「Above the line」「Below the line」の2つに分けられる。「Above the line」はWriting(脚本)、Director(監督)、Producer、Acting Talent(俳優)、Care and feeding of all of the aboveの5項目。「Below the line」は場所代やカメラマンなど製作期間にかかる費用で45項目ほど、資金調達にかかる費用や音楽(音楽は基本的に映像が完成してから作るんだそうだ)、保険料などその他の費用が8項目ほどである。

なぜ「Above the line」「Below the line」の2つに分けられているかと言うと、「Above the line」が莫大な金額を占め、かつ変動が大きいからである。「Below the line」はいわば人月単価で支払いをするような感じになるので、比較的変動が少ない。

200億円製作費がかかる映画には3つのパターンがある。

1.アニメーションムービー(アナ雪など)

2.CGIムービー(トランスフォーマー、アバターなど)

3.スターを起用したムービー(ミッションインポッシブルなど、たくさん)

1,2はそもそも映像の製作自体に大変な労働力が必要になるので別として、3はなんでこんなにかかるのかと疑問に思う人が多いだろう。元々、スターの費用が急騰を始めたのは海外の売上比率が増え始めた1970年代に遡る。国際的にファイナンスするためにはまず売れる理由が必要になり、その一つがスターだったというわけだ。現在アメリカ外の売上比率は55〜60%程度まで上がってきているとのこと。何も映画界がトムクルーズをプッシュしているわけではなく、知名度のあるスターの起用が必要だったのである。ちなみに、女性で名前だけでファイナンスできる俳優は、以前はジュリア・ロバーツただ一人だったとのこと。

全然関係ないが、教授とも仕事をしたことのあるトムクルーズは非常にプロフェッショナルな方だそうで、常に撮影にはオンタイム、非常に謙虚で脚本もしっかり読み込み、リテイクが少ないとのこと。ロバート・デニーロなどは逆にこだわり過ぎて撮影が押すこともしばしばだとか。まぁ、それはまた別の話。

予定が入ったので続きは後日。

Feature Film Financing and the Studio System その2

Feature Film Financing and the Studio System その2

前回の授業のまとめ続き。興味深かった話を箇条書きでまとめておきたい。

・映画を観る理由の圧倒的No.1は口コミ。

・映画の売上の85~90%は6大スタジオ製作の映画によるもの。

・州によって一人当たりの映画産業の売上は全く異なる。例えばシアトルやソルトレークシティは映画産業が大きいのに対し、シカゴやマイアミは相対的に小さい。ファミリー数、女性比率などが原因とのこと。女性比率が高い方が人々が映画を観に行く回数は多くなる。特にこの傾向が強いのは日本で62%の映画鑑賞は女性主導。

・HBOやSHOWTIME、Netflixなどのオンデマンドサービスの利用者はほぼ重複しており、各3000万人程度。そのため、案外アメリカ全体の人口からするとマイノリティであることを理解する必要がある。

・ターゲットは大きく分けて老若男女の4パターンで設定する。

・世界で最も多くの地域に放送されている番組はゴルフ。視聴率が低くとも、他の番組がリーチできない中流階級以上の層にリーチできるため広告需要があるから。

・アニメーション映画の製作費は200億円くらいかかるのに対し、平均的には70億円程度の興行収入にしかならない。(その後のライフサイクルで回収する)

・映画ビジネスの4大リスク

1.誰かが気になるコンセプト作れるかどうか(そもそも気になる内容でなければ誰も見ない)

2.1のコンセプトを実行し、作りきることができるかどうか(ここが一番難しい)

3.どうやってマーケティングするかコンセプトがあるかどうか

4.天災、スキャンダルなどの社会的イベントに邪魔されないか(1-3がうまくいっても運悪くここで失敗することもある。教授曰く「自分の金は使うな!」とのこと)

・映画公開時に成功した映画は、その後のサイクルでも成功し続ける。

・ビデオのみで劇場公開のない映画も多く存在する。その中で「Video God」と言われる俳優はケビン・ベーコン。全然映画のタイトルを知らない人でも、「お、ケビン・ベーコンがでてるー」ということで借りたり買ったりするらしい。日本で言ったら哀川翔あたり?

今日は2回目の授業。楽しみ。

グランドキャニオン

グランドキャニオン

新学期が始まったばかりの3連休ということで比較的時間に余裕があったため、先週末は世界遺産であるグランドキャニオンへ。ロサンゼルスからは車で休憩を挟んで8時間ほどだろうか。そのスケールの大きさにはただ圧倒されるばかりであり、マチュピチュとはまた違った魅力のある観光地である。

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こちらは崖からのサンセット。下を見ると足がすくむほど切り立っており、毎年多くの方が足を滑らせて落ちてしまうとのこと。無理はしないように!

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果てしなく続く渓谷。グランドキャニオンは、7,000万年前に隆起した大地をコロラド川が少しづつ削っていくことでできた特殊な地形である。今コロラド川が削っているのは20億年前の地層らしい。科学的にも大変貴重なサンプルなのだ。

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こちらは夕日が沈んで夜が更けていく様子。日本の空とは少し雰囲気が違う気がするが、気のせいだろうか。

今回はキャンプということで、せっせとテントを張って野宿。とはいえ、グランドキャニオンはアメリカ最大の観光地の一つ。キャンプ場は非常に発達していてシャワー付き、トイレも清潔で過ごしやすく、案外快適であった。

次はいつ、行けるかな?