「Incubatrix」と「テイ」

「Incubatrix」と「テイ」

本日は試験後にUSCにあるIncubatrixという在校生向けの起業関連施設を視察。起業を志すUSCの学生向けに無料でオフィスを貸し出し、初期の費用を7,000ドル負担してくれるというなんとも太っ腹な施設だ。現在のところ15社が入居。250平方メートルのオフィスを近く450平方メートルまで拡大する予定だという。同様の施設はカリフォルニアにはスタンフォードとUSCにしかなく、運営費用は全て卒業生からの寄付で賄われている。

さらに資金を必要とするベンチャーはUSCの卒業生の資産家TOP300のコンタクトリストを閲覧することができ、連絡できるようになっている。もちろん簡単にはいかないと思うが、2,500万円くらいはポンと出してくれる人が結構いるらしい。しかも「出資」ではなく、「寄付」である。つまり株式は起業した側が100%保有できるので、起業を志す学生にとってはこれ以上ない条件なのだ。以前読んだ映画に関する資金調達法を書いた英書には、第一章に「お金持ちを探して寄付を募ろう」ということが真面目に書いてあった。寄付する側には税法上のメリットがあるため、「映画のエンドロールに名前を乗せます!」といった自己顕示欲をくすぐる口説き文句で、こちらには割と寄付をしてくれる人がいるようだ。起業する場合は「映画のエンドロールに名前を乗せます!」の代わりに「創業時のボードメンバーに名前を連ねるということで是非!」といった感じで寄付をお願いするらしい。ちなみに「USC Marshall School of Business」の「Marshall」も多額の寄付をしてくださった人の名前である。お金を十分に持った後は、自分の名をどこかに永久に残しておきたいと思うのが人の性なのだろうか。

ところで、クラスメートでテイという韓国人がいる。全然クラスに出席してこないのに成績は謎にストレートでAを取る、よく分からないがスマートなやつである。何を学びにビジネススクールに来たの?という気がしなくもないが。彼はUSCの学部出身で、在学中に貧困層向けの携帯電話の販売を手がける会社を立ち上げ、数年前に会社を売却したお金持ちである。非常にドライな考え方の持ち主で、「在学中に起業すれば、優秀な人間をタダみたいな賃金でバイトさせられるところが大学のいいところ」と言っていた。

そんな彼が最近やたらを私に起業をせまっている。私は運良くゲームという最近割とホットな業界で、企画から開発、マーケティング、運営まで全て経験しているので、スキルセットとしては一応一通り揃っており、投資サイドからはちょっぴり魅力的に映るらしい。まぁ昨今のゲーム事情を知る側からすれば、そこそこ良いゲームを作ろうとしたらスマホゲーム1本の開発・マーケティングで最低1億円、それも成功の確度はそれほど高くないギャンブルなので、お金さえあれば作ることが可能だとはいえ、色々考えだしてしまうとなかなか踏み切れない。

そんなテイが言っていた起業する際のポイントを挙げてみる。

・無償でボランティアしてくれるクラスメートを使え!
ボランティアする側も良い経験になるし、レジュメ(履歴書)にも書けるので、Win-Winだそうな。

・起業コンテスト的なものは避けろ!
よく「優勝者に起業資金○万ドル」といったコンテストがあるが、彼の友人でそれを元に起業した人たちは皆失敗しているらしい。ステークホルダーが増え、外部に資本参加させることにもなるため、成功した場合のうまみも薄れるんだとか。

・超金持ちの友人を作れ!
上に書いたような、「2,500万円くらいはポンと出してくれる人」を友達にするのが一番手っ取り早く楽らしい。口出しもしてこないし、別に失敗しようが気にも留めない「超ド級の金持ち」がいいとのこと。そしてそんな学生はUSCに確かにいる。楽天の三木谷さんもハーバードのクラスメートから起業の資金を集めたんだったかと思う。

Incubatrixの所長は、「失敗できるとしたら学生の今しかないよ、今すぐジョインアス!!」といったことを言っていた。ふむ。次の学期からは多少なりとも時間ができるので、考えてみる価値はあるかもしれない。

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