グローバル・ストラテジー

グローバル・ストラテジー

明日はグローバル・ストラテジーのクラスの期末試験。これが中々役に立つクラスで、以前勤めていた会社が海外展開に苦しんでいる理由がフレームワークを通じて浮かび上がってくる。私の中での結論としては、企画段階でみんなに分かりやすい戦略を立て、レールを敷いてあげることが重要であり、それがなければ海外売上比率50%!海外売上比率50%!よろしくね!!と声高に叫んでも担当者や部署が実際に具体的なプロセスが分からずに動き出せなかったりする。簡単に使えそうなフレームワークをまとめてみる。

★海外展開のタイプ4つ

海外展開している会社のタイプとして、以下の4つが挙げられる。まずは自分達の会社がどのようなスタンスで海外を攻めるべきか参考になる。どれがいいかは一概には言えない。

・グローバル

特に現地に合わせてローカライズ(Adaptation)をせずに「ウチの製品が一番!君の趣味は関係ないよ!ウチの使いなさい!」とゴリ押し世界展開でスケールメリットを出すタイプ。マイクロソフトのWindowsとか、アメリカのゲームとか、世界中で売って開発費の元を取ろうというタイプである。

・マルチドメスティック

親切丁寧に現地のテイストに合わせた商品を提供するタイプ。例えば日本の寿司屋が寿司をアメリカに合わせてカリフォルニアロールにしたり、とかそういうこと。逆にスケールメリットは追求しない。寿司屋の例で言えば、日本の市場が飽和しているので新たな成長の機会を求めてアメリカに、というのが海外展開の動機になる。

・トランスナショナル

「うちはスケールメリットを出しつつ現地のテイストにも合わせるよ!いいとこ取り!」というタイプ。例えば鶏肉の卸業者が大量仕入れ、世界展開でコストメリットを出すと共に、さらに鳥の足は中国に、胸肉はここに、といった具合に現地で好まれ利益が最大化できるように商品を工夫したりするタイプ。

・インターナショナル

「ローカライズもスケールメリットもそこそこに、ええそこそこでいいんです私たちは、」というタイプ。日本のゲームソフト会社は任天堂を除いてこれに当たる気がする。

★WBMHフレームワーク

そもそもなんで海外に出てかなきゃいけないのか、行っていいことがあるの、どうやっていくんでしょう?ということを突き詰めるプロセス。それぞれのポイントを洗い出して検証する。

・W…Why?(なんで?)

ただ海外に行きたいってだけではあれなので、なんで行く必要があるのかはっきりさせる。主な動機としては、会社の成長、コストの効率化、新たな知識の吸収(後のイノベーションに繋がる)、お客さんが海外展開するらしいので付き合わないといけない(BtoBのケース)、ライバル会社が行くらしいので先行者利益を取られないようにウチも行っておこう、などが挙げられる。

・B…Bring/Built?(何を持っていくの?)

現地で事業展開するにあたって、勝算があるのか、会社のアドバンテージは何なのかはっきりさせるプロセス。優位な知識や製品があるとか、うちの営業力は誰がなんと言おうと世界一です!とかそういったことをつらつらと書いていく。

・M…Meet?(海外のマーケットとの親和性は?)

海外に行くとして、いきなり今は中国にすごい市場があるから中国しかないでしょ、と言われても「なんで?他の市場は?リスクは?」と言われてしまうので、ターゲットとなるマーケット群を詳細に分析して比較検討する必要がある。この際には「CAGEフレームワーク」というフレームワークで現在の市場との様々な距離を測るプロセスが有効。

C=Cultural Differences(文化的違い)…例えばメキシコは独特のあまーいパンが好まれるので日本のパンを普通に売ろうとしてもなかなか売れないよ、とかそういう文化的な違いを洗い出す。

A=Administrative Differences(運営上の違い)…例えば関税が高いよねーとか、電圧が違うから変えなきゃとか、特有環境規制があったりとか、法律が違うとか、そういった外的要因をピックアップ。

G=Geographic Differences(地理的な違い)…ここの地域は気温が違うからアイスは売れないよね(一概に言えないが)、とか日差しが強いから日焼け止めがよく売れる、とか遠すぎて輸送コストが大変、とかそういった地理的な要因を挙げる。

E=Economic Differences(経済的な違い)…所得の水準が低いとか、ミドルクラスはこれくらいいて可処分所得はこれくらい、とか、電気とかのインフラは整っているかとか、スペースのコストはこれくらいとか、お金にまつわる話をまとめるプロセス。

あとは政治的なリスクがありますとか、経済破綻のリスク、通貨リスクがあるとか、市場はどれくらいオープンですかとか、洗い出す必要がある。

・H…How?(どうやって?)

上のグローバル、マルチドメスティックなどの4つの戦略から一つを選び、そこからどうやって攻めるのか実際のプロセスを煮詰めていく。例えば海外市場に参入する際に現地の会社を買っちゃうのか、ジョイントベンチャーを設立するのか、ゼロからスタートするのか、大きく3つ方法が考えられる。中国だとジョイントベンチャーしか選択肢がなかったりするので、そのあたりも考慮する。買収して参入するのであればターゲットとなる会社を洗い出し、社風の違いなども考慮する必要がある。ソフトバンクがT-mobileを買収してアメリカ市場に参入しようとしているのは記憶に新しい。ソフトバンクの戦略はマルチドメスティックに当たるだろう。もしかしたらメーカーからの携帯電話の購入の際に交渉力が高まり、コストメリットが出てトランスナショナル的な戦略になっているかもしれない。

 

上記諸々海外展開についてを簡単にまとめると、以下のようなイメージ。

・現在の市場との違いがあまりない→そのままビジネスモデルをコピーして、スケールメリットを出す。

・結構いろんな違いがある→現地の市場に合わせたビジネスに変える必要がある。もしくは違いを利用して利益を出す(アービトラージ)。

ではまた一週間がんばりましょう!

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