パズドラとブレイブフロンティアに見るアメリカ市場における失敗と成功

パズドラとブレイブフロンティアに見るアメリカ市場における失敗と成功

前回に引き続きちょっと真面目にゲームの話。こちらにいて、よく日本産のゲームとして引き合いに出されるのが「パズドラ」と「ブレイブフロンティア」だ。後者はいわゆる日本っぽいゲームがアメリカで受け入れられた例として、前者はアジアで強烈なヒットを飛ばしたのにこっちで売れないのはなぜ?という例として語られる。

そう、パズドラはアメリカで「失敗」したのだ。

失敗といっても、並のゲームだったら十分に大成功レベル。トップセールスのチャートで10~50位くらいをコンスタントに取っている。ただし、あのパズドラである。お化けコンテンツのパズドラである。まことしやかに囁かれていたのは、「日本風のデザインがアメリカ人に受け入れられないのではないか」というもの。しかし、「ブレイブフロンティア」がコンスタントにトップセールス10~20位近辺をマークするヒットを飛ばしたことでそれは否定された。そもそも、ファイナルファンタジーの時代から日本のゲームはアメリカで売れているのだから当然といえば当然。じゃあ問題はなんだったのか。

私が行き着いた答えはマーケティング。

ではiPhoneのダウンロード数のランキングを見ていこう。

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こちらはClash of Clans。こちらでは誰もが知る超ヒットコンテンツで、ソフトバンクが開発会社のSuperCellを買収したのが記憶に新しい。常にゲームのダウンロードランキングでトップ50位以内に入り、2014年に入ってからはさらなる広告の強化の効果なのか10位以内をコンスタントに取っている。これだけ月日が経って未だにダウンロードされているのは驚異的である。

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続いてブレイブフロンティア。Clash of Clansほどではないが、しばらくの間100位以内をキープし、今なおいい位置をキープしているのが分かる。

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そしてパズドラ。なんと立ち上げすぐ1500位を下回る圏外となる。2013年の7月頃から11月頃にかけて、Clash of Clansとの相互キャンペーンによるものなのかランキングが急浮上。大々的なプロモーションをおこなって再起を目指したのが見て取れる。しかしながら、時すでに遅し。11月を過ぎた頃にどうやらあきらめたようだ。

上記2つの成功コンテンツと比較し、明確な違いがある。「Facebook」連携だ。こちらではみんなハードにFacebookを使うのは以前述べた通りだが、こちらではFacebookで昔流行ったゲームの流れそのまま、Facebook経由で皆友達を誘うのだ。なんとこの必須とも言える機能がアメリカ版パズドラにはない。恐らく担当者がその重要性を知らなかったのだろう。だって日本では重要ではないのだから。出すのが早すぎたとも言える。後発のブレイブフロンティアはアメリカ市場の特性を捉えアジャストすることができた。

逆に言えば、この程度のダウンロードで売上上位をキープしているのはある意味驚異的である。恐らく、LTV(一人お客さんを獲得するあたりの収益)で言えば、アメリカでもパズドラは上記2つのコンテンツを凌いでいる。だからこそ、初期のマーケティングの失敗が悔やまれる。

私は、この失敗がなければパズドラがアメリカ市場を制覇したと思っている。パズドラがアメリカでぱっとしない、という話を聞いて、アメリカ進出をあきらめたデベロッパーがどれだけいただろうか。無理やりアメリカに合わせたコンテンツを作ろうとしてゾンビだとかよく分からないモチーフでゲームを作り直したところがどれだけあっただろうか。

タラレバの話だが、もしパズドラが成功していたら。後に大勢日本のゲーム会社が続き、アメリカのランキングを席巻していた様子が目に浮かぶ。市場規模が倍になるので、かけられる予算も増え、より良いゲームが生み出される。やっぱりゲームは日本が凄いよね。マリオの時代から俺は知ってたぜー、最近は本気出してなかっただけだよ、と。

でもまだ遅くはない。ブレイブフロンティアに感化された日本のゲーム会社とそのスマートフォンゲームが、次々とアメリカに登場してはランキングを塗り替えていくことを願わずにはいられない。全然関係ないが、ブレイブフロンティアを開発している会社の社長さんと以前麻雀を打ったことをふと思い出した。今はウハウハで麻雀どころじゃないんだろうなぁ。

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