ふと思うこと

ふと思うこと

ここ数日、日本のニュースを見ると原爆が広島、長崎に投下された時の話が盛んに取り上げられていて、昔、横浜駅で開催されていた原爆に関する展示をたまたま乗り換えの間にフラーっと見てとっても衝撃を受けたのを思い出す。昔から授業で「原爆」がなんなのか、どこにいつ落ちたのかは知っていたが、それが本当の意味で原爆について知るきっかけになった。

2年ほど前だろうか、出張ついでに留学を志すきっかけの一つになった松下村塾に行ったのだが、その途中で広島に寄って原爆ドームと原爆資料館に寄ったことがある。立ち寄る動機になったのは、その直前にインターネットで知った、ある男性の話。

広島で原爆が落ちたその瞬間、その原爆のほぼ直下にいて生き残った方がいたのをご存じだろうか。多分私の世代の人は1%くらいしか知らないだろう。どうやって原爆の直下にいて生き延びることができたのか、不謹慎にも非常に興味をそそられたのである。その方、野村英三さん(当時47才)は84歳で天寿を全うされたそうだ。

その後購入した「原爆体験記」には、野村英三さんの生々しい体験記も綴られている。本のカバーにある、大江健三郎氏のコメントは、非常に説得力のあるものである。

「この一冊の書物は、われわれが、たとえ苦痛とともにであれ、あえて記憶しつづけねばならぬ事実と真実とを、異様な緊張度において提示する。ここに記録された人間的悲惨は、われわれに耐えがたいショックをあたえる。しかしあえてなお、われわれはこれらの手記を熟読しなければなるまいと思う。 -大江健三郎」

当時実際にその悲惨な現実を体験した方の多くは、すでにこの世を去っている。日本は唯一の被爆国で原爆の恐ろしさを伝えていかなければならない立場にありながら、ほとんどの人は当時実際に何があったのか知らない。特に若い世代の人達が知らないのは、とても残念なことに思う。

当時の広島を3Dで完全に再現して、原爆体験者の一日を追体験するようなゲームは作れないだろうか。一切脚色のないドキュメンタリーとして。非営利で。クオリティーを考えると予算は最低10億円くらいかかりそうだが、きっとその価値はある、多くの人に知ってもらいたい事実がそこにあるはずだ。映画よりも、なによりも、実際に自分の足で広島の街を歩き、体験することにゲームとして作る価値があるように思える。

ちょうど似たようなタイプの映画みたいなゲーム、「ラスト・オブ・アス」をプレイしながら、やっぱりゲームは無限の可能性を秘めているなーと思う。そんな業界にいられて幸せである。もうあと2週間でインターンもおしまい。そしてすぐに授業が始まる。そんなことを考えながら、金曜日の夜は更けていくのであった。

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