33年間変わらない映画の儲け方

33年間変わらない映画の儲け方

今週の月曜日から2年生になって初めての授業が始まった。今年から念願のシネマスクールの授業が取れるようになったのだが、これが本当に面白い。その一つ、”Feature Film Financing and the Studio System”という授業は、実はUSCを受験する際に挙げた受けたい授業の筆頭であり、そして期待を裏切らず今までの授業の中で最高の授業だと胸を張って言える。

元々何故この授業を受けたかったかと言うと、一つのコンテンツに数百億円の資金を集める映画のファイナンス手法に非常に興味を持ったからである。平均予算80億円と言われる、スタジオ映画ほどの予算のゲームは現在一握りであるが徐々に増えつつある。それが一本のコンテンツに大量のお金をかけることができない日本のゲーム業界が、徐々に輝きを失いつつある一因となっているのだ。

映画がお金をくわえて帰ってくる仕組みは、実は過去33年間大きく変わっていないという。その仕組みは以下の流れになる。

1.劇場公開

2.飛行機、軍の基地、大学、船、牢獄、石油掘削場などクローズドな環境での上映

<ここまでで大体4-6か月>

3.ビデオ(ウォルマート、ターゲット、ベストバイなどの小売)、オンライン配信

4.Pay TV、ケーブルテレビ ここから3に戻って2-3年の周期を繰り返す

昔はメジャーネットワーク(日本でいうキー局)がテレビで流していたりしたらしいが、ここ最近はあまりないらしい。これだけ見るととてもシンプルな構造である。大体7年ほどで映画のライフタイムにおける売上の90%くらいが手元に来るらしい。33年間変わっていないと書いたのは、それまではビデオがなかったからだ。ビデオは劇的に映画業界の仕組みを変えたのである。

ファイナンスの仕組みについてはまだ触った程度であるが、結論としては6大スタジオは基本的に全て自分達で賄っている。数百億の予算で失敗すれば大損害があるというのに、だ。以下がその6大スタジオである。

1.ワーナーブラザース(親会社 タイムワーナー:コンテンツビジネス)

2.21世紀フォックス(親会社 ニュースコーポレーション:メディアビジネス)

3.ディズニー(親会社 ウォルトディズニー:ネットワーク、コンテンツ、テーマパーク、ESPN)

※ちなみに、ウォルトディズニーの最も大きな事業は映画でもディズニーランドでもなく、ESPNというスポーツネットである。意外だ。

4.ユニバーサル(親会社 コムキャスト:ケーブルビジネス)

5.パラマウント(親会社 バイアコム:コンテンツビジネス)

6.コロンビア(親会社 ソニー:電気機器ビジネス)

ご覧の通り、どのスタジオも超強力なパトロン親会社がバックに付いていることが分かる。それぞれの親会社の中核ビジネスは異なるが、財閥的に事業領域が多岐にわたるため、共同制作といったことは利益が相反する部分が出て基本的に成立しないのだ。だから基本的に自分達でやる。自分達で全リスクを取って最大限シナジーを生かし、全利益を回収する。

そしてもう一つ、これらのスタジオは映画ですぐに儲けようとしていない。実は劇場公開した映画のほとんどは赤字だそうだ。6大スタジオ以外と比較すればそれはそれは高い確率で黒字だそうだが、案外ヒットは少ない。しかし、例えば一本映画がコケたとして、年間14~20本のポートフォリオでカバーできると彼らは考えている。かつ大量の映画ライブラリが安定的収益をもたらしてくれるため、実は古くなったライブラリの一部を更新する、という感覚なのである。

6大スタジオと同じ仕組みがゲームでできないだろうか。日本のゲーム会社を持ってシナジーを発揮できるところはどこだろう。そんなことを考え出すと眠れなくなりそうなので、今日はこのあたりでやめて後日続きを書くことにしたい。実は明日からグランドキャニオンでキャンプなのだ。楽しみ。良い週末を。

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