Feature Film Financing and the Studio System その5

Feature Film Financing and the Studio System その5

今日も引き続き、映画の話。かなりゲームと共通点が多くためになる部分が多い。なぜ予算が高額化していったのか、労働組合だとかスターの価値の向上などは前回の投稿で述べたところであるが、一番の理由は「最も高い確度で儲けられる」からである。

6大スタジオが他の映画製作会社と比較しCompetitive Advantage(優位性)を持っている点は、6つある。

1.資本力

2.知識(要は、大規模プロジェクトを完遂するだけの経験値)

3.製作会社との関係(新参のLions gateなどはここで結構喧嘩してしまうんだとか)

4.Tracks(基本的にアメリカの会社は談合できないが、暗黙の了解でどのスタジオがいつどれくらいの規模の映画を公開するのか分かってしまう)

5.年間14~20本の映画で全てのジャンルをカバーしている(Full range of products)

6.マーケティングにおける方程式が決まっている

最も重要と思われる1の資本力は、過去の大量の映画ライブラリがその源泉になっている。新しい映画の放映権を古い映画などと抱き合わせでケーブルTVなどに売ることで安定した収益を得られるわけだ。例え新作が映画館で失敗したとしても、ライブラリの一つとしての需要は十分にある。一年単位で見れば、全く映画を作らなかったほうが儲かったりするらしい。ただしライブラリを常に更新していかなければ長期的には儲からないのである。

これをゲームに当てはめてみると、映画ライブラリと新作映画との関係は、ゲームにおける既存IPと新規IPの関係に似ている。既存IPとは、すなわち過去から現在に渡ってリリースしているシリーズである。ドラクエ、ファイナルファンタジーなどは10作以上、スピンオフも含めればかなりの数のゲームをリリースしていることだろう。ただし、さすがにずーっとそれだけで拡大していくのは難しい。そのため新規のIPを作り、育てていく必要があるわけだ。失敗したゲームでも、Steamなどのプラットフォームでまとめ売りして何回か資金回収できるチャンスが徐々に増えつつある。

ただし、現在の日本のゲーム会社で新規のIPを生み出していくのは非常に難しいと言わざるを得ない。当然予測が立ちにくいので、大きな予算が取りづらいのである。先日リリースされたアクティビジョンのDestinyは、完全に日本のゲーム会社では実行できないことをスタジオシステムに近い方程式でやってのけた。製作費500億円の、続編ではない完全新作である。巨額の予算でマーケティングの方程式に乗っ取り、他の会社が真似できないことをやることが、最も成功の確度が高いと知っているのである。

これを他の北米のゲーム会社に続けてやられてしまうと、世界の上位コンテンツが独占されてしまい(もうすでにそうなってきているが)、日本のゲーム会社は映画でいうところの「インディペンデント系」といわれる言ってみれば「弱小デベロッパー」になってしまう。

日本のゲーム会社に何が足りないのか、映画の仕組みを知ることで透けて見える気がした。

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