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海外のメディアが日本のソーシャルゲームについて書いた記事が面白い。あとパズドラの嘘について

海外のメディアが日本のソーシャルゲームについて書いた記事が面白い。あとパズドラの嘘について

ロサンゼルスは日差しがやたら強いので、日陰で22度でも日なたの体感温度は30度くらいある気がする。西向きの部屋なので、6時か7時くらいの西日が差す夕方が一番部屋が暑くなるという不思議。

ちょっと読んで面白い記事があったのでご紹介。

Japan to experience “mini boom” in social casino

日本でソーシャルカジノのミニブームが起きている、という内容。記事の引用元が”Social casino intelligence”というサイトなので、内容をソーシャルカジノに結びつけたい意向が働いているのは確かだが、興味深い。

“Social game makers over here realize that the card battle frenzy will come to an end someday and are getting increasingly experimental by mixing adventure or RPG elements with social casino game mechanics,”

要は日本のソーシャルゲームメーカーがカードタイプのゲームの熱狂が終わることを認識して、アドベンチャーやRPGとソーシャルカジノを組み合わせたゲームをリリースしてきているということが言いたいらしい。

カジノとして挙げられていたのは以下のゲーム。

Konami – Dracolle & Poker

GREE – Poker Creature

Cybird – Dragon Poker

CyberAgent – Battle Slot

Sega – Dragon Coins

Magical Company – Pachinko Battle

確かにゲーム名を見るとカジノっぽいタイトルが並んでいる。ただ、日本で実際に作っていた側から見るとこれらは「パズドラのオマージュ」であって(一部プレイしたことないが)、カードゲームが飽和状態になり新規会員獲得が難しくなったため、カードゲームにカジュアルゲームの要素をくっつけて間口を広げようとした結果である。もちろん海外のソーシャルカジノを意識していた可能性はあるが、パズドラの二匹目のドジョウを狙いにいった作戦と見て間違いないだろう。課金の柱は「ガチャ+αで時間短縮アイテム」のままだ。だからこのリストに本家パズドラが含まれていないことにやや違和感がある。

ソーシャルカジノは今海外のスタートアップ界隈でかなりホットな話題らしい。一時オンラインカジノが法規制を受けて衰退したものの、今年の2月にニュージャージー州でオンラインカジノ法案が通るなど、各地で「ソーシャルカジノ」と名前を変えて盛り上がりつつある。

http://venturebeat.com/2013/07/01/zynga-no-longer-the-largest-social-casino-game-publisher/

こちらの記事によると、世界の市場規模は現在$1.2 billion(約1,200億円)で、年内に67%増えて$2 billion(約2,000億円)まで成長する見込みだという。かつて飛ぶ鳥を落とす勢いだったソーシャルゲームの雄、Zyngaが現在この分野に全力投球しているのも興味深い。シェア一位の座は奪われたもののまだ15%のシェアを押さえ業界二位と頑張っている。Big Fish Casinoという会社はiPhoneのアプリだけで3ヶ月で$14.5 million売り上げているという。やはりこちらもモバイルが今後主流になるのだろう。日本でも電車に乗りながら暇つぶしでギャンブル、ジャックポットで1億円当てて卒倒する日が来るかもしれない。

こうやってみると日本のソーシャルゲームの流行と似ていなくもない。日本のソーシャルゲームでも、ガチャでアイテムゲット→ヤフオクで売却、というギャンブルは成立していた。最近はリアルマネートレードが問題視され、売上面でも案外マイナスがないのでトレードの機能をカットしだゲームが増えているが、ゲームの本質はギャンブル性の高い「ガチャ」で成り立っており、この点ではあまり海外のカジノゲームと変わらない気もする。モチベーションが「金」なのか、「自己顕示欲」なのかの違いだけだ。

ちなみにパズドラは「ポカポカ運営」を公言してユーザーに優しいゲームをアピールし、コンプガチャ問題で叩かれたグリー、Mobageのゲームに代わって賞賛されているが、騙されてはいけない。かつてプロデューサーがARPPU(有料会員一人当たりの一ヶ月の売上)が5,000円を超えないように気をつけていると言っていたが、2013年1〜3月の売上が月間100億円近くあることを考えると、とても低額課金者に支えられたコンテンツとは思えない。それにARPPUは安売りのイベントで課金率を意図的に高めることで低く見せることが可能だ。月100万円以上課金しているユーザーが何人いるのか公表してほしい。以下で未成年に課金制限を付けたとあるが、

http://www.gungho.co.jp/ir/uploads/irk_20130405.pdf

未成年への課金制限は実はほとんど全体の売上にインパクトがないずるい作戦である(しかも年齢は偽装可能)。本当にポカポカ運営にしたいのであれば年齢問わずユーザー全体に課金制限をかけるべきであり、それができないというのは経営へのインパクトが大きすぎるからだ。つまり高額課金者に支えられている証拠である。怪盗ロワイヤル→ドラゴンコレクションの流れに続く新しいジャンルを切り開いた素晴らしいコンテンツなのだが、あたかも「みんな低額で遊んでます」という風に見せかけるのはいかがなものか。グリーとモバゲーを叩きたいからパズドラを救世主にしたい気持ちも分かるが、やっていることはおんなじだ。

ゲーム関係者以外も注目するガンホー(パズドラの会社)の今年の4〜6月の決算は今月29日に発表される。

MBA的ソーシャルゲーム考② 広告用語編

MBA的ソーシャルゲーム考② 広告用語編

今回は第2回ということで、ソーシャルゲーム、オンラインゲーム運営における広告用語編。前回KPI編はこちら

基本的に広告代理店は人気の高い枠と低い枠を抱き合わせで販売してくると思ったほうがいい。向こうも付き合いがあるので枠の仕入れ先にもいい顔をする必要があるのだ。そのために、常にCPA=顧客一人当たりの獲得単価、がいくらであったのか計算して、元が取れる広告だったのかどうか確認し、変な広告を掴まされないように気をつける必要がある。

以下ネット広告に焦点を当てた用語だけ押さえておけば、広告代理店と話をする時に困ることはないだろう。オフライン(ネット以外のTV、雑誌、新聞、ラジオなど)の広告については費用対効果の計算が非常に難しい。感覚値から言えば、ソーシャルゲーム、オンラインゲームのプロモーションにおいて、CM以外でペイできるオフライン広告はほぼ無いと断言してしまってもいいだろう。

もちろん、無料でできるパブリシティ活動(メディア向けにプレスリリースを配信したり、今度こんなん出すから、こんなイベントやるからこの紙面の○ページくださいよーという活動)は時間に余裕さえあれば雑誌等も積極的にやっていい。TVパブリシティ(お願いランキングなどのTV番組中で扱ってもらう活動)は基本代理店を挟むのでお金がかかるが、CMと比較すると割安だったりする場合がある。

・CPA
<読み方>シーピーエー、獲得単価など
<意味>お客様一人当たりの獲得単価
<使い方>「ちょっとこのCPAでは次回は同じ広告出せませんね〜」「お!○○CPA安いじゃん!」

・imp
<読み方>インプレッション数、インプレッション、インプなど
<意味>広告ののべ表示回数。有力サイトではimp数での販売が多い。(例)10,000,000imp 1,000,000円 imp単価0.1円
<使い方>「imp数は多くてもページ下の端っこのほうにバナーあるから全然クリックされてませんよ!」

・CPC
<読み方>クリック単価、シーピーシーなど
<意味>バナー広告のクリック単価
<使い方>「クリック単価200円かーちょっと高いですね」「ここのバナー面積大きいからかCPCにすると案外安いっすね」

・CTR
<読み方>クリック率、シーティーアールなど
<意味>バナー広告のクリック率
<使い方>「CTRはクリエイティブ次第」「これクリック率高いけど間違ってクリックしてる人多いんじゃね?」

・CVR
<読み方>コンバージョン率、コンバージョン、コンバージョンレート、シーブイアールなど
<意味>公式サイトに来てからゲームに入会する割合%
<使い方>「バナーと公式サイトのクリエイティブにギャップがあるからコンバージョン悪いんですかねー」「この時間はサーバー落ちてたんでCVR0%です」

・純広告
<読み方>ジュンコウコク、ジュンコーなど
<意味>特定のサイトの特定のバナー枠を指名買いする広告のこと。imp単価で売るものが多い
<使い方>「ジュンコーはCPA高いんで今後は出せません」「お!○○のジュンコー安いじゃん!」

・リスティング(SEM)
<読み方>リスティング、セスイーエム
<意味>Googleとかヤフーで検索すると上とか右に出てくる”スポンサーサイト”と書いてあるうざいやつ。クリック単価売りで日夜入札がおこなわれる。
高い金額で入札するほど出やすくなる
<使い方>「”サッカー ゲーム”の検索ワードで入札しときますね」

・アフィリエイト
<読み方>アフィリエイト、アフィリ、アフィ
<意味>アフィリエイト会社の提携サイトのネットワーク内に出す広告。提携サイトはimp売りができないようなプチサイトが多い。
メジャーなアフィリエイト会社は3社くらい。CPA売り、クリック単価売りがあるがCPA売りがメイン。
CPAを指定できるので最もリスクが低く、CPAも最も安くなる場合が多い。サイト拒否指定をしないと変なサイトに広告が出ることがある。
<使い方>「ちょっとアフィリの単価上げてみて提携サイト増やします」「アフィリエイトは安いよね〜」

・ネットワーク広告
<読み方>ネットワークコウコク、アドネットワーク、アド○○、
<意味>クリック単価売りのみのアフィリエイト。高級なアフィリ。
アフィリエイトの単価が安め安定で焦った広告代理店が、サービスの名前変えれば値段上げても気づかれないんじゃね?と産みだした悪いやつ。アフィリエイトだけでカバーできないサイトがあるので出さざるを得ない。リタゲなどの新機能もある。
<使い方>「アフィリとネットワーク広告って何が違うの?」

・リターゲティング広告
<読み方>リターゲティング、リタゲ
<意味>一度でもリンクを踏んでサイトに飛んだユーザーを延々追いかけ回し別のサイトに行っても同じ広告を表示してくるストーカー。ネットワーク広告の機能の一つ。クリック単価は高め。
<使い方>「よく見る広告でうざいと思ってたらリタゲだったのか」「リタゲうぜー」

・SEO
<読み方>エスイーオー
<意味>Googleとかヤフーで検索したときに上の方に表示されるようにする努力のこと
<使い方>「SEO対策全然やってないじゃん」「”サッカー”検索で現在3位です!SEO効果出てますね〜」

・リワード広告
<読み方>リワード
<意味>ゲームに入会したり、一定地点まで到達することでお金やポイントがもらえる広告。リワード広告でインストール数ランキングを意図的に引き上げ、自然流入を狙う方法を「ブースト(別名ランキング操作)」という。(今もあるのかな?)
<使い方>「リワードで入ったユーザーはやっぱ継続率低いなー」「もはやリワードでしか新規が取れなくなった」

・クリエイティブ
<読み方>クリエイティブ
<意味>バナーのデザインのこと
<使い方>「女の子のクリエイティブはCTR高いな〜」

◎考え方
CPAが最も重要。入会後の課金傾向などもどのサイトから入ったかで変わると主張してくる広告代理店もいるが、
信頼できるデータにするには半端ではない広告出稿をする必要があり実質不可能。
アフィリ、リスティング、SEO、ネットワーク広告がCPA低め(数百円〜千円)。ただしこれだけでは取れる会員数が限られるので、
純広告を出しても元が取れるコンテンツかどうかが成功/失敗の境目になる。

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◎CPA計算式
クリック単価売り、インプレッション売りの広告でもCPAは計測可能。

クリック単価÷CVR=CPA
インプレッション単価÷CTR÷CVR=CPA

(例)インプレッション単価0.5円、CTR0.1%、CVR10%の場合
0.5円÷0.1%÷10%=5,000円(CPA)
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ダレル・ロイヤルの手紙

ダレル・ロイヤルの手紙

先日伺った高校の生徒達が書いてくれた授業のアンケート結果をもらった。

厳しいコメントを想像して見るまではドキドキしたが、無記名なのにみんな前向きで素敵なコメントを書いていてくれて本当に嬉しい。私がゲームという生徒になじみのある仕事をしていたことも良かったのかもしれない。みんなのコメントはアメリカまで持っていくよ!

※追記 なんと生徒の一人が進路指導の際に「ゲームプロデューサーになりたい」と言っていたそうな。こんなに嬉しいことはない!!!!

以前、自分がプロデュースしたゲームの総プレイ時間を出したことがある。確か数万年という単位だった。それだけ多くの方が人生の大切な時間を使ってくれているというのは、売上よりも利益よりも嬉しい。ただし、そういった娯楽よりも人生にとってより重要なのはやはり仕事や勉強であり、ゲームで気晴らしをすることがその後の人の生き方に影響を与えることは稀である。

先生という職業は、それとは対極であり、相手の人生に介入できる総時間はゲームプロデューサーよりもずっと少ない。ただし、それぞれの人生に与える影響は極めて大きい、やりがいのある仕事だと思った。

授業の最後に「ダレル・ロイヤルの手紙」という文章を朗読させてもらった。ダレル・ロイヤルさんという大学のアメフトコーチがチームの学生に送った手紙のようだが、原文の存在が明らかになっておらず真偽は定かではない。ダレル・ロイヤルさんは昨年88歳で亡くなられたそうだが、大変な名コーチだったらしい。私はGIGAZINEで7年程前にこの文章を知り、つらい時度々勇気づけられた。漫画アイシールド21でも取り上げられたことがあり、それがきっかけで生徒の何人かはすでに知っていた。多くの人に知ってほしい文章なので、以下に転載したい。

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親愛なるロングホーン諸君

打ち負かされる事自体は、何も恥じるべき事ではない。打ち負かされたまま、立ち上がろうとせずにいる事が恥ずべき事なのである。ここに、人生で数多くの敗北を経験しながらも、その敗北から、はいあがる勇気を持ち続けた、偉大な男の歴史を紹介しよう。

1832年 失業

1832年 州議選に落選

1833年 事業倒産

1834年 州議会議員に当選

1835年 婚約者死亡

1836年 神経衰弱罹病

1838年 州議会議長落選

1845年 下院議員指名投票で敗北

1846年 下院議員当選

1848年 下院議員再選ならず

1849年 国土庁調査官を拒否される

1854年 上院議員落選

1856年 副大統領指名投票で敗北

1858年 上院議員、再度落選

そして1860年、エイブラハム・リンカーンは米国大統領に選出された。

諸君も三軍でシーズンをむかえ、六軍に落ちる事があるかもしれない。一軍で始まり、四軍となるかもしれない。諸君が常に自問自答すべき事は、打ちのめされた後、自分は何をしようとしているのか、という事である。不平を言って情けなく思うだけか、それとも闘志を燃やし再び立ち向かっていくのか、ということである。今秋、競技場でプレーする諸君の誰もが、必ず一度や二度の屈辱を味わうだろう。今まで打ちのめされた事がない選手など、かつて存在したことはない。ただし、一流選手はあらゆる努力を払い、速やかに立ち上がろうと努める。並の選手は立ち上がるのが少しばかり遅い。そして敗者はいつまでもグラウンドに横たわったままである。

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