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Go for broke!

Go for broke!

th_2013-07-11 14.11.57

ようやく行けた全米日系人博物館。軽い気持ちで訪れたものの、そこには日系アメリカ人の想像を超えた苦難の歴史があった。出稼ぎで大枚を稼ぎ、故郷に錦を飾ることを夢見て出て行った日本人が初めに経験したのは奴隷同然のプランテーションでの生活。そんな中でも独自のアイデンティティーを発揮し、その後も太平洋戦争中の強制収容など、多くの苦難を乗り越えていった結果、今の大きな日系人コミュニティがある。

そんな日系人の歴史の中でひときわ目を引いたのが「第442連隊戦闘団」について。アメリカ陸軍史上最も輝かしい戦績をおさめ最も多くの勲章を受けた部隊が、実は士官を除き日系人100%で構成された部隊だったのをご存知だろうか。

真珠湾攻撃後、アメリカに住んでいた多くの日系人が財産を没収された上強制収容所に送られた。軍に属していた者は除隊処分を受けた。以下はハワイ領防衛軍所属の日系二世169人から、軍の将軍あてに提出された嘆願書である。

「ハワイは我々の故郷であり、合衆国は我々の祖国である。我々の忠誠心はただ一つ、星条旗だけに向けられている。我々は忠実なアメリカ市民として、祖国のため、出来うる限り働きたいと希望している。」

自らの忠誠心を疑問視された日系人は、アメリカの戦争遂行に進んで協力した。各種ボランティア団体に多数が参加し、自主的に従軍する者が続出。やがて1万人のハワイ二世がアメリカ陸軍所属の兵士となり、彼らを中心に「第442連隊戦闘団」が組織された。

「第442連隊戦闘団」は日本人と戦うことになる太平洋戦線には送られず、ヨーロッパ戦線へと送られた。彼らは「Go for broke!(全てを賭けて戦え)」を合言葉に死力を尽くして戦い、多くの犠牲を出しながらもテキサス大隊の救出、ドイツ強制収容所の解放など目覚ましい活躍を見せ、計21に及ぶ軍の最高勲章「メダル・オブ・オナー」を受章した。日系人として最高のアメリカ大統領継承順位第三位、上院仮議長まで上り詰めたダニエル・イノウエ(井上 健)氏も「第442連隊戦闘団」に所属しメダル・オブ・オナーを受章した一人である。

当時の日本人から見たら、彼らはもしかしたら裏切り者と言われるかもしれない。しかし彼らは自分たちの命をかけてアメリカ日系人コミュニティの誇りを守り、その後もアメリカと日本の橋渡しに尽力した。やがてアメリカにおける日本人は「模範的マイノリティー」と言われるようになっていく。

現在のアメリカ軍では「第442連隊戦闘団」の歴史を学ぶ授業は必修となっているという。ダニエル・イノウエ氏が亡くなってから約半年が立った今年5月、米海軍は建造予定の新鋭イージス艦に「ダニエル・イノウエ」と命名した。メイバス海軍長官は「真の米国の英雄に敬意を表することができ光栄だ。『ダニエル・イノウエ』は米国を象徴する存在となる」と語ったという。