形のないものに値段を付けるのは難しい。基本プレイ無料アイテム課金のゲーム(いわゆるフリートゥープレイのゲーム)ではアイテムがデータのため原価が基本的にゼロである。そのため、なんとなくどこかの誰かが決めたガチャ1回300円、時間短縮系アイテム100円というのが基準になっている。ちなみにファミスタオンラインの頃はガチャ1回100円であった。
ところが、300円というのは非常に流動的であり、1日一回100円であったり、11回連続ガチャ3000円、あるいはイベント中はレアキャラが出やすいといったことで実質価格(1回の価値)を激しく変更する運営がおこなわれている。これは、小売の業界で言えばHi-Low Pricingというプライシング戦略の一環である。一方、そういったキャンペーンによる値引きを一切しないのが、EDLP(Every Day Low <Same> Price)戦略である。そこで、ゲームの世界でのマネタイズをこれに当てはめて考えてみたい。
・Hi-Low
パズドラ、モンストなど日本製オンラインゲームほとんど全部。
・EDLP
クラッシュオブクラン、Hearthstoneなどの海外製ゲーム。
ゲームを長く運営している人なら分かるかと思うが、Hi-Low戦略によるメリットはたった一つ、「運営が頑張っている感」であると思う。お客様、もしくは上司などに対してうちはこんなに頑張って運営してますよーというアピールなのだ。もしEDLP戦略を取っているゲームにHi-Low戦略を取り入れたら、短期的には売上は急激に上昇するだろう。初めての値引きなのだから当然である。売上をある程度コントロールして結果を出した風に見せることも可能だ。ただし、長期的に運営しているとだんだん苦しくなってくる。お客様が「値引きorレア率アップイベント待ち」の状態になり大幅値引きイベントを連発したりして運営が迷走を始める。そして「運営頑張っている感」のアピールを継続するために他ゲームとの無意味なコラボイベントなどを始めることになり、お客様が徐々に去ってやがて運営終了を迎えるのだ。
それに対し、EDLPのメリットは明確。無駄なイベントに対する出費を抑え、ゲーム内容への投資に利益を回せるようになる。かつてフィーチャーフォンのゲームが流行っていた頃には月の限度額を毎月1日に使い切るユーザーが多かったため1日に合わせてイベントをおこなうのは致し方ないことであったが、現在はそんなこともない。ゲーム運営における無駄なオペレーションが減れば、日本製ゲームの競争力も上がる。どこかが勇気を持って一歩を踏み出してほしいものだ。