Monthly Archives: 3月 2015

Battle of the bands

Battle of the bands

先週金曜日はBattle of the bandsというUSCのチャリティークラブ主催のイベントに出演。3つのバンドが出演し、無事我々のバンドが優勝したため、来月スタンフォード大学でおこなわれるチャリティーイベントで何百人もの観客の前で演奏できることになった。やったね!ちなみに私のパートはベースギター。

思えば高校生の時は洋楽ばかり、ステレオにかじりつきながら何時間も飽きずに聴いていた。御茶ノ水の楽器屋やCDショップを何時間もウィンドウショッピングして周る典型的なロック好き少年だった。それが大学に入り、社会人と年を取るにしたがって不思議と音楽を聞かなくなり、姉に頼み込んでお金を借りてまで買った自慢の白いベースは次第に埃を被っていった。

もう楽器を弾かなくなって10数年も経ち、もう一生弾くことはないだろうと思っていた矢先、遠い異国の地でまた音楽を聴くようになり、ベースを弾いているのだから不思議な気分である。10数年間を経て、CDはデジタルに、楽譜は本からウェブサイトになった。昔みたいに2,000円の楽譜を30分迷った挙句、深呼吸してから買うこともなくなった。音楽業界が急速にシュリンクしているのは寂しい話ではあるが、本当に便利になったものである。

なにはともあれ、なんだか久々に青春時代に戻ったような気持ちで嬉しいのであった。

Expectation

Expectation

某公益法人向けに書いていたレポートが終わったのでほっと一息。今日はこれからUSCにまたスティーブ・バルマー氏がやってくるので話しを聞きにに行く予定。バルマー氏はお子さんがUSCに通っていることもあってかどうやらUSCが好きらしい。先日行ったGame Developer’s Conferenceの話によれば、マイクロソフトは将来的にWindows、Xbox、Windows Phone、最近話題のHoloLensなどをAPIで統合していく計画のようで、そのあたりのゲームの面白い話が聞ければいいのだが、さすがにもうバルマー氏は退社しているので知らないだろうか。

こちらに留学してきて本当に様々なことを学んだが、一つ学びとして大きかったのが、全てのサービスの価値は「Expectation」に基づいているということである。シネマスクールの講義を聞いていて良く語られたのが、「Meet expectation」「Exceed expectation」という言葉である。

人は常日頃から自分の常識の中で生活している。何かサービスを受ける時、あるいは映画を観に行く時、気づかない間に自分の中で内容を予想し、期待値をセットしている。それを実際のサービスが上回ると「良かった」となり、下回ると「酷かった」となるわけである。例えば、ファイナルファンタジー13-2のAmazonの評価はたったの2.5/5である。これが新作のゲームだったなら、どうだろうか。「凄いグラフィックのゲームだ」とおそらく高い点数が付くだろう。ただ、ファイナルファンタジーシリーズとしてはややがっかり感があったのだろう。「想像していたのと違う。」これが低評価に繋がるのである。結果を出せば出すほど次回の「Expectation」は上がっていく。EYのコンサルティング部門が提唱している指標でBrand Integrity(BI) = Experience / Expectationというものがある。期待値を上回り続けることで、真のブランドであると認知されるわけだ。実に分かりやすい。

ここでExperience / Expectationがある一定値を超えた場合には、「驚き」や「感動」といった効果をもたらす。人は感動すると、誰かに話したくなる生き物である。それは口コミで広がり、素晴らしいサービスやコンテンツとして認知されることになる。例えばZapposというオンライン靴販売の会社は超手厚い電話でのカスタマーサポートが「驚き」や「感動」をもたらし、かけた費用以上に宣伝効果を獲得できている。

これは仕事をする中でも言えることだ。常に会社やチームからの要求の期待値を超える仕事をすることで、自分への信頼は高まる。その繰り返しだろう。たまに「驚き」「感動」レベルの仕事を織り交ぜることで、さらに信頼を高めることができるかもしれない。

スクウェア・エニックスのIkumori氏が来校

スクウェア・エニックスのIkumori氏が来校

中間試験も終わり、卒業前最後の春休み。今のところは特に遠出をすることもなく、政府関連の法人から依頼のあったレポートをせっせと書いているところ。文章を書くのは元々あまり得意なほうではないのだが、学校で書く他のレポートと違って参考文献を大量に並べる必要もなく、自分で思ったことが書けて面白い。内容はMarshall School of BusinessとそのGraduate Certificate in the Business of Entertainmentについて。この2年間を振り返る意味でもいい機会になった。

昨日は某スタートアップから中期経営計画策定の手伝いをしてもらえないかという依頼を受け、今週はその資料作成もすることになったので、遠出しなくてもそこそこ忙しくなりそうである。

ところで先週の木曜日、USCにスクウェア・エニックスのIkumori氏が来校し、CG製作のレクチャーをおこなってくださった。Ikumori氏は過去20年に渡りファイナルファンタジーをはじめとして数多くのゲームにCG製作の責任者として携わっているお方。彼のずらりと並んだ作品ポートフォリオが画面に表示された時、司会の教授が”This is the most impressive portfolio I have ever seen.”と言い、会場がどっと沸いたのが印象的だった。日本のゲームの影響力が世界で弱まったとはいえ、ゲームファンは皆日本産ゲームで育った人ばかりなのだ。日本人として誇らしい瞬間であった。

通訳を介してのレクチャーは大変内容の濃く練りに練られたものであり、特にCG課の学生にとっては大変ためになる、スクウェア・エニックスに入社したいと思わせる素晴らしいレクチャーだっただろう。このような試みは日本のゲームのプレゼンス向上にも役立つはずであるし、是非続けていって欲しいものである。

EDLP VS. Hi-Low

EDLP VS. Hi-Low

形のないものに値段を付けるのは難しい。基本プレイ無料アイテム課金のゲーム(いわゆるフリートゥープレイのゲーム)ではアイテムがデータのため原価が基本的にゼロである。そのため、なんとなくどこかの誰かが決めたガチャ1回300円、時間短縮系アイテム100円というのが基準になっている。ちなみにファミスタオンラインの頃はガチャ1回100円であった。

ところが、300円というのは非常に流動的であり、1日一回100円であったり、11回連続ガチャ3000円、あるいはイベント中はレアキャラが出やすいといったことで実質価格(1回の価値)を激しく変更する運営がおこなわれている。これは、小売の業界で言えばHi-Low Pricingというプライシング戦略の一環である。一方、そういったキャンペーンによる値引きを一切しないのが、EDLP(Every Day Low <Same> Price)戦略である。そこで、ゲームの世界でのマネタイズをこれに当てはめて考えてみたい。

・Hi-Low

パズドラ、モンストなど日本製オンラインゲームほとんど全部。

・EDLP

クラッシュオブクラン、Hearthstoneなどの海外製ゲーム。

ゲームを長く運営している人なら分かるかと思うが、Hi-Low戦略によるメリットはたった一つ、「運営が頑張っている感」であると思う。お客様、もしくは上司などに対してうちはこんなに頑張って運営してますよーというアピールなのだ。もしEDLP戦略を取っているゲームにHi-Low戦略を取り入れたら、短期的には売上は急激に上昇するだろう。初めての値引きなのだから当然である。売上をある程度コントロールして結果を出した風に見せることも可能だ。ただし、長期的に運営しているとだんだん苦しくなってくる。お客様が「値引きorレア率アップイベント待ち」の状態になり大幅値引きイベントを連発したりして運営が迷走を始める。そして「運営頑張っている感」のアピールを継続するために他ゲームとの無意味なコラボイベントなどを始めることになり、お客様が徐々に去ってやがて運営終了を迎えるのだ。

それに対し、EDLPのメリットは明確。無駄なイベントに対する出費を抑え、ゲーム内容への投資に利益を回せるようになる。かつてフィーチャーフォンのゲームが流行っていた頃には月の限度額を毎月1日に使い切るユーザーが多かったため1日に合わせてイベントをおこなうのは致し方ないことであったが、現在はそんなこともない。ゲーム運営における無駄なオペレーションが減れば、日本製ゲームの競争力も上がる。どこかが勇気を持って一歩を踏み出してほしいものだ。

スティーブ・バルマー氏が来校

スティーブ・バルマー氏が来校

昨日、元マイクロソフトのCEOであるスティーブ・バルマー氏が来校し、一緒にランチをいただく機会があった。こじんまりしたものではなく大規模なものであったが、色々と面白い話をうかがうことができて良かった。

皆参加者が口をそろえて言っていたのは、Likable(感じのよい)人であるということ。世界有数の億万長者でありながら、人生大成功!といった雰囲気はおくびにも出さない。一方で、お金はより多くの時間をくれる、生活を助けてくれる、といった話をしていたのが印象的だった。

マイクロソフトでCEOとして働いていたとき、仕事時間の8割は予算編成の話だったという。XBOX事業への多額の投資を承認したのもスティーブ・バルマー氏であった。昔、マイクロソフトへ入社する前はエンターテインメント業界で仕事がしたかったそうで、もしかしたらそんなバックグラウンドがゲーム事業を推進したことに関連しているのかもしれない。

そんなバルマー氏は先日NBAの名門ロサンゼルス・クリッパーズを買収し、マイクロソフトを退社。趣味を兼ねてスポーツの世界へと進出した。彼は「情熱が持てる分野を見つけること」が最も成功するために大切なことだと言っていた。同感。そんな情熱を題材にしたPippinという舞台がとても素晴らしかったそうで、学生達におススメしていた。時間がある時にDVDでも取り寄せて観てみようかと思う。

ちょっと嬉しかったこと

ちょっと嬉しかったこと

2年ほど前、留学の直前に友人の勤める某高校から貴重な授業の時間を割いてお話をさせてもらう機会があった。詳細はここ

時間が経つのは早いもので、当時2年生になったばかりだった高校生はもう卒業直前。昨日友人からメールがあり、そのうちの一人が無事現役合格したそうだ。曰く「英語は苦手でしたが、おかげでやる気になりました」とのこと。どんな話をしたかすっかり忘れてしまったが、少しは役に立てたのだろうか。なんだかとてもほっこりした気分になった。

今週は中間試験の真っ最中。色々と試験以外にもやることが山積していて久々に青息吐息である。しかし高校生が頑張って現役合格したのだから、あの時偉そうにペラペラ喋った31歳が弱音を吐くわけにはいかないだろう。気合いを入れなおして今週乗り切っていこうと心に誓うのであった。

Game Developer’s Conference in サンフランシスコ

Game Developer’s Conference in サンフランシスコ

一昨日、昨日と1泊2日の弾丸ツアーでサンフランシスコのGame Developer’s Conference(GDC)へ。東京ゲームショウなどと違ってほぼ業界人向けのイベントのため、一般の方が行って楽しめる要素はあまりなかったりする。初日はUSCのシネマスクールによる懇親会に参加。200人以上参加していて凄い盛り上がりである。日本はゲームの専門学校こそあれ、大学がまともに取り組んでいるというのは聞いたことがない。運よくThatgamecompanyの創業者の方とちょっとだけ話せた。

2日目は、MBA出身で某ゲーム会社へ行った珍しい経歴のN氏と一年ぶりくらいに再会。なかなか世界を股にかけて面白い仕事をされているようだ。またロサンゼルスで飲めるといいのだが。

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こちらアタリのブースで展示されていた伝説的クソゲー(低クオリティゲーム)E.T.。膨大なライセンス料を支払ったにも関わらず、開発開始からクリスマスに間に合わせるため発売までたったの6週間、製作チーム1人という絶望的な状況でプロジェクトがスタート。案の定莫大な赤字を出してアタリ社倒産のきっかけとなり、数百万本が廃棄処分となって埋立地に埋葬された。その後2013年に、都市伝説と化した廃棄の話の真偽を確かめるため大々的な発掘作業がおこなわれた結果、無事ソフトが発掘されたことから噂は真実だったことが明らかになり、発掘されたパッケージはスミソニアン博物館に所蔵されたという。なんというか、なんとも間の抜けた話である。

この他にもいくつか興味深い展示があったが、スマートフォンゲームの流行もあってか日本人が多く見受けられたのが印象的だった。特にアプリに対する広告系、データ分析系のサービス紹介が多かった気がする。バブルのような一過性のもので終わらず引き続き日本のプレゼンスを世界に示していってほしいものである。

E2

E2

昨日は所属するBusiness of Entertainment AssociationのイベントE2(Evolution of Entertainment Conference)に参加。さすがに今までUSCでエンターテインメント業界の様々な方々から講義を受けてきたこともあり、スピーカーのうち数人は実は以前話を聞いたことのある方で、内容的にはあまり目新しさのあるイベントではなかったかもしれない。

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一点、面白かったのはOphir Lupu氏の話。この方UTAというタレントエージェンシーに所属しており、ゲーム業界のタレントと契約し、映画業界における俳優や監督と同じようにゲーム業界のタレントをプロジェクトに派遣、契約金の数%の手数料を取るエージェントなのである。最大のタレントエージェンシーCAAにも同様のチームがあるそうで、ゲーム業界でそのような動きがあることは全く知らなかったため非常に興味深かった。クライアントにはBio ShockのKen Levine氏やICOの上田文人氏といったゲーム業界のそうそうたる顔ぶれが揃う。

ゲーム業界では特定の人物がネームバリューを得ることは映画業界と比較するとあまり多いことではない。しかし、ゲームのクオリティがプロジェクトにおける特定の人物にかなり依存することも事実である。これからはどんどんディレクターなりプロデューサーなりが顔を出していって、タレントエージェンシーに所属し、やがて高額の報酬を得るようになるのかもしれない。これによって人材が硬直しがちなゲーム業界がより流動的になり、活性化するようになればいいのだが。